縁起のいい食べ物として、結婚式やおめでたい席に欠かすことができない≪昆布≫は、鎌倉・室町時代から今日まで『よろこんぶ』として、縁起物とされています。
まるでゴロ合わせのシャレのようですが、昆布が"縁起物"と言われるようになるには、日本人と昆布の切っても切れない関係があります。

■政(まつりごと)にも欠かせなかった昆布
奈良時代の歴史書『続日本紀』によると、「715(霊亀元)年、蝦夷(現在の東北地方)の須賀君古麻比留から"こんぶ"が朝廷に献上された」と書かれています。
実はこれこそが、昆布について書かれたもっとも古い記録。
また、平安時代の詳しい決まり事についてかかれた『延喜式』という書によれば、地方の特産物を収める税金として陸奥の国(青森県)から、昆布が収められていたといいます。

■昔の昆布の名前は、「ヒロメ」でした
昆布は、平安期にはすでに祝膳にのぼったそうです。そんな宮中の古式にならって室町時代になると武将が出陣するときのラッキーアイテムとして登場します。
一に打ちあわび、二に勝ち栗、三に昆布…すなわち「打ち勝ちよろこぶ」という語呂あわせですが、戦乱の世の武将達には単なる言葉遊びでは済まされない、もっと大切なアイテムだったと思われます。

■栄養面でもお祝いの場にピッタリ!?
広く一般の人まで、昆布をお祝いごとに使うようなったのは江戸期から。結納の席にも、子生婦(こんぶ)として登場するようになりました。昆布の繁殖力の強さもあって"よい子が授かりますように"と用いられていたようです。しかし、食物繊維やカルシウムがたっぷりの昆布は、妊婦さんにはうってつけの食品という側面もあったのかもと推測されています。

このように、昔からおめでたい日やここ一番の大事な日にかかせない大切な食糧として受け継がれてきた昆布。
長い長い歴史の中で、ただの語呂合わせだけではない価値が出来上がったのだと推測されます。

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